フィンランド軍突撃砲 BT-42
制作・写真・文章 根生
主だった人気車輌は出尽くした感のある1/35AFVで、おいしいところは全部中国勢に持って行かれて最近あまりパッとしないタミヤが、この夏の新製品として投入したのがフィンランド軍の突撃砲BT-42です。このあまりにもな選択にビックリして、タミヤなのに仕入れなかった模型店もあったりするとかしないとか・・・
ただ、自走砲好きの私にとっては結構うれしかったりします。とはいえ、ホントの事を言うと、こんな車輌があったなんてつい最近まで知りませんでしたけどね(笑)。
突撃砲と言ってもこのBT-42は回転砲塔を備えており、見たところ戦車なんですが、たぶん砲塔の装甲がかなりペラペラで戦車と呼ぶには防御力に難点があったんでしょうね。
第2次世界大戦はドイツが一方的に他国を攻めた様に思われていますが、実は開戦当時ソ連軍も同時にポーランドに攻め入っていますし、その3ヵ月後にはフィンランドにも侵攻しています。ソ連は連合国の一員として世界の平和をナチの脅威から守ったことになっているのですが、その実はナチスを非難することはできないんですね。
その時のソ連とフィンランドの間に開かれた戦争が冬戦争と呼ばれる戦争で、まともな戦車を持たないフィンランドが多くの犠牲を出しながらも辛くもソ連軍を追い払いました。
冬戦争が終わって多くのソ連軍戦車がフィンランド国内に置き去りになったので、フィンランド軍はこれを鹵獲(ろかく:いただいちゃうんですね)して使うことにしました。
BT-47はそんな置き去りにされた戦車の中から旧式となったBT-7をベースにイギリス製の114mm榴弾砲を搭載して作られました。砲塔はBT-7の砲塔に大きな箱を取り付けて巨大な114mm砲がおさまるように改造されたのです。
BT-42は全部で18輛が作られ、独ソ開戦にともないにフィンランド軍はドイツ軍と共に再びソ連軍と戦うこととなりました。しかしより強力になったソ連軍のJS-2やT-34にはまるで歯が立たなかったそうです。それでも生き残ったBT-42は戦後もフィンランド軍に登録されていたそうです。戦争が無くってよかったですね。
キットには今の時代に合わせてエンジンデッキのメッシュやクリアパーツが入っています。これくらいはしないとドラゴンとかのキットと比べて見劣りしてしまいますからね。エッチングパーツは曲げ加工がやりやすいように治具が入っており、エッチングパーツの扱いに不慣れな初心者にも優しくなっています。でもこのステンレス製のエッチングパーツは切り取りも大変で、私はあまり好きじゃありませんけどね。
クリアパーツは運転席の窓以外は使いません。ゴーグルやヘッドライトのレンズは他で使えるかもしれませんね。
キットには繊細な溶接の痕もキッチリと表現されています。溶接痕などの表現の自然さはさすがにタミヤです。
金型の抜きの関係でシャープに再現できないリベットのヘッドなんかは別パーツになっているのですが、細かなリベットを1個ずつ植えなくてもいいように裏からまとめて付けられるように工夫されています。こんな配慮もタミヤらしくていいですね。