もう一人のタイガーエース
タイガー1中期型 オットーカリウス搭乗車 タミヤ 1/35
制作・写真・文章 Bluebell
プロローグ
第2次世界大戦で登場する戦車の中でも、当時無敵といわれたタイガー1。その無骨なスタイルから、現在でもAFVモデラーにとっては最も人気のある、そして最も有名な戦車と言ってよいでしょう。
このタイガー1は、高度に訓練されたドイツ戦車兵の手によって数々の伝説を残し、多くの武勲を上げた戦車兵、いわゆる「エース」を輩出します。今回はその中の一人であるオットー・カリウス少尉が搭乗した、第502重戦車大隊所属のタイガー1「217号車」を制作します。
キットは、タミヤの『タイガー1中期型 オットー・カリウス搭乗車』を使用します。内容は、『タイガー1中期型』のキットに専用フィギュアとデカールをセットした製品ですが、すでにスポット生産に移行して久しく、店頭ではあまり見かけません。手に入らない場合は、定番の中期型キットを使えば車輌のみ制作することは可能です。
その場合、マーキングは市販のデカールを購入するか、手書きでの再現となります。第502重戦車大隊のシンボルである象のマークはタミヤの『タイガー1初期型』のデカールに含まれているのでこれを利用し、番号だけ頑張って手書きすれば比較的容易に再現が可能でしょう。
(余談ですが、このデカールで、有名な「マリナーファの戦い」でカリウス少尉とともに大戦果を挙げたケルシャー曹長搭乗のタイガー1初期型「213号車」が再現できます。)
今回の制作のテーマは、「1/35スケールのタイガー1の正確な模型を作る」ことではなく「1/35スケールのタイガー1のプラモデルを作る」ことです。キット以外に使用するアフターパーツはタミヤのエッチンググリルのみとし、基本的にストレート組みで制作を進めていきます。また、完成度を高める工作のポイントもご紹介したいと思います。
それから、ドイツ戦車につきものの「ツィンメリットコーティング」について、エポキシパテを使用した技法を出来るだけ詳しく解説します。
この制作記をご覧になりながら、難しく考えずに手を動かして、ぜひ一緒に作ってみてください。そして、「プラモデルはオモシロイ!」と感じていただければ幸いです。
組み立てを始める前に
この制作記を書くにあたっては、初心者の方に読んでいただくことも想定しています。そこで、組み立てに入る前に、まずはプラモデル作りに必要な工具を紹介しておきましょう。
私が普段使用している工具です。主に使うのはたったこれだけ。プラモデルなんて、そんなにたくさんの道具を揃える必要はなく、最低限これだけの工具と接着剤さえあれば作れるのです。
まず刃物です。ニッパーとナイフはなくてはならない工具です。ツメ切りでも代用はできますが、最近のキットは非常に小さい部品があったり、刃を入れる隙間が狭かったりするので、やはりニッパーのほうが作業しやすいです。
薄刃ニッパー(写真下)は、プラモデルのゲートカットに特化したニッパーです。ほかの用途には使えませんが、大変よく切れて切断面がきれいですので、切った痕をヤスリ等で仕上げる手間が省けます。多少高価ですが、造りが良いので廉価品より長持ちします。プラモデルのゲートカット自体、工具にとってそれほど負担の大きい仕事ではないので廉価品でも何年も使えますが、逆にいえば何年も使いにくいのを我慢することになります。
ニッパーは最もよく使う工具だけに、最初から良いものを持っておくほうがストレスなく作業できます。
ナイフは、デザインナイフが使いやすいです。また、いろんなタイプの刃に交換できます。一般的な斜刃とノミ刃があると便利です。
左のノコギリ刃は0.1ミリ厚エッチングソーで、薄いため切り幅が小さく、部品の寸法が狂いにくいので重宝します。
部品の整形やゲート処理に使うヤスリです。私は、紙ヤスリはほとんど使いませんが、整形用には600~1000番程度のものを揃えておくとよいでしょう。